進化する医療用チューブ市場における光硬化型接着剤のメリット
(出典:Krylex.com / Chemence)

医療用チューブ市場の動向
多くの市場調査会社は、医療用プラスチックチューブ市場が2025年までに100億米ドルを超え、年平均成長率(CAGR)は9%以上に達すると予測しています。
他の多くの医療機器と同様に、院内感染への意識の高まりや感染拡大防止への取り組みを背景として、ディスポーザブル(単回使用)チューブアセンブリの需要が急速に拡大しています。
さらに、医療用チューブには従来以上の性能が求められるようになっています。材料や組立工程にはさらなるコスト競争力が求められる一方、組立工程で一般的に使用されてきた溶剤については、その毒性に関する規制が強化されています。また、より厳しい寸法公差や高い柔軟性への要求が、新しいプラスチック材料の開発を促進しています。
従来、医療用チューブにはポリ塩化ビニル(PVC)が広く使用され、チューブとコネクタの接合には溶剤接着が一般的な方法でした。
PVCは、比較的低コストであることに加え、高い透明性、優れた耐薬品性、高い引張強度、優れた耐キンク性(折れ曲がりにくさ)、そして多くの滅菌方法に対応できるなど、多くの利点を備えています。
溶剤接着とは、強力な溶剤によってプラスチック表面を一時的に軟化させ、材料同士の分子を融合させることで、溶剤の揮発後に永久的な接合を形成する方法です。
しかし、従来主流だったPVCと溶剤接着には、今日の市場ではさまざまな課題が生じています。
PVCの柔軟性を高めるためにはフタル酸系可塑剤が添加されることが一般的で、その割合は材料全体の約3分の1に達する場合もあります。しかし近年では、フタル酸エステルに対する社会的な懸念が高まり、医療用途での使用は敬遠される傾向にあります。
また、溶剤接着では環境負荷や性能面での問題もあります。
世界各国では溶剤使用に関する規制が強化されており、使用量の制限や製造現場での安全対策がますます厳しく求められています。
さらに、強力な溶剤は一部の硬質プラスチックに応力割れ(ストレスクラック)を引き起こすほか、溶剤が十分に揮発しないことによる汚染リスクもあります。
医療機器メーカーがこれらの規制対応コストを考慮すると、溶剤接着のメリットを上回る負担となりつつあります。

TPEと接着剤
医療用チューブに求められる性能の高度化に伴い、新しい材料の開発も進んでいます。
現在では、より高い柔軟性、押出成形性、厳しい寸法精度、洗浄剤や特殊医薬品に対する耐薬品性などが求められています。
こうした要求に応える材料として、熱可塑性エラストマー(TPE)が注目されています。
最新のTPEは、透明性、引張強度、柔軟性、耐薬品性、耐滅菌性などにおいてPVCに匹敵する性能を備えています。
さらに、
- 抽出物(Extractables)が少ない
- リサイクルが可能
という利点もあります。
TPEは複数のポリマーを組み合わせた共重合体であり、熱可塑性樹脂とゴム弾性の両方の特性を兼ね備えています。
製造技術の進歩により、現在では薄肉で柔軟なTPEチューブを安定した品質で低コストに製造できるようになりました。
その結果、医療機器メーカーはPVCを使用せずに、同等あるいはそれ以上の性能を実現できるようになっています。
接着剤への切り替えによるメリット
材料だけでなく、組立方法についても溶剤接着から接着剤への移行が進んでいます。
特に光硬化型接着剤への切り替えにより、次のようなメリットが得られます。
- 異種材料間でも高い接着強度を実現
- 必要なタイミングで硬化できるため、位置調整時間を十分確保
- 溶剤接着で発生しやすいストレスクラックを防止
- 接着部に蛍光機能を付与でき、品質検査が容易
- 溶剤残留による汚染リスクを低減
異種材料への優れた接着性能
溶剤接着は、PVC同士のように同一または類似材料同士の接合には適しています。
しかし近年の医療用チューブアセンブリでは、
- TPEチューブ
- ABS製スポーク
- PC製ルアーロックコネクタ
- 金属部品
- 各種プラスチック
など、多様な材料を組み合わせるケースが増えています。
このような異種材料の接合では、光硬化型接着剤が優れた接着性能を発揮します。
また、プラスチック同士だけでなく、プラスチックと金属の接着にも対応できます。
図1は、Chemence社のKRYLEX® KM9905光硬化型接着剤を用いた各種材料のせん断接着強度を示しています。
※図中で材料名に付いたアスタリスク(*)は、試験中に接着部ではなく母材が破壊されたことを示しています。

光硬化型接着剤による製造工程の効率化
光硬化型接着剤は「必要なタイミングで硬化できる(Cure on Demand)」ことが大きな特長です。
多くの製品では、適切な波長・照度の光を照射すると数秒で完全硬化します。
一方、光を照射するまでは硬化が始まらないため、作業者は接着位置を十分に調整できます。
硬化後は直ちに次工程へ進めるため、後硬化や乾燥待ち時間は不要です。
また、光硬化型接着剤は光照射によって完全硬化するため、溶剤接着のような揮発待ち時間(オフガス時間)は必要ありません。
さらに、KRYLEX®の光硬化型接着剤は100%固形分で構成されているため、溶剤接着で問題となるストレスクラックの発生を大幅に低減できます。
また、多くの製品には蛍光機能が備わっており、365nmのUVライトやブラックライトを照射すると接着部が発光します。
これにより、
- 接着剤塗布位置の目視確認
- 不良品の削減
- 品質管理の向上
を容易に実現できます。
まとめ
医療用チューブ市場は急速に成長するとともに、従来の材料や組立方法から新しい技術への転換が進んでいます。
PVCと溶剤接着は現在でも重要な技術ですが、性能面や環境規制への対応から、多くの医療機器メーカーが代替技術を採用し始めています。
PVCの代替材料としては、
- PEBA
- SEBS
- TPU
など、さまざまなTPE材料が広く利用されています。
また、溶剤接着は同一材料同士の接合に適していますが、多様な材料を組み合わせる現在の医療機器では、接着剤による組立がますます重要になっています。
KRYLEX®光硬化型接着剤は、
- 優れた異種材料接着性
- 必要なタイミングでの高速硬化
- 接着部の蛍光検査
- ストレスクラックや汚染リスクの低減
といった数多くのメリットを提供します。
さらに、KRYLEX®製品はISO 10993に基づく生体適合性試験の複数項目に適合しており、医療機器メーカーに高い安全性と信頼性を提供しています。