カメラモジュールのアクティブアライメント工程を支える次世代接着技術
(出典:Krylex.com / Chemence)
スマートフォンやウェアラブル機器の普及に伴い、小型電子機器に搭載されるカメラモジュール(CCM:Compact Camera Module)の数は年々増加しています。市場予測では、CCM市場は2021年に350億米ドルを超え、2025年には約500億米ドル規模へ拡大すると見込まれています。
さらに、自動車分野でもカメラモジュールの搭載数は急速に増加しており、2025年には車載カメラモジュールの生産数量がスマートフォン向けとほぼ同等になると予測されています。
KRYLEXでは、長年培ってきたUV硬化およびデュアルキュア(UV+熱硬化)技術を活かし、CCM組立用の幅広い接着剤を開発しています。
CCMには固定焦点タイプとオートフォーカスタイプがあり、1つのモジュールに5~10種類もの接着剤が使用されます。そのため、接着剤の選定はカメラモジュールの性能と信頼性を左右する重要な要素となります。
また、それぞれの接着部位ごとに求められる性能は大きく異なるため、用途に応じた接着剤の最適化が必要です。

カメラモジュール組立におけるアクティブアライメント(AA)工程
近年のカメラモジュールでは、搭載されるレンズ枚数が増加する傾向にあります。
レンズ構成が複雑になるほど、最適な焦点位置を高精度で固定することが重要になります。
そのため、アクティブアライメント(AA:Active Alignment)工程では、UV+熱硬化型(デュアルキュア)接着剤が広く使用されています。
AA工程は、以下の手順で行われます。
まず、イメージセンサーのハウジングへ接着剤を塗布します。
続いて、レンズホルダーを接着剤に接触させます。
その後、イメージセンサーを動作させながらレンズ位置を微調整し、最も高い画質が得られる焦点位置を探索します。
最適な位置が決定すると、UVまたは可視光を照射し、接着剤を瞬時に硬化させてレンズ位置を固定します。
この一次硬化によって十分な初期強度が得られるため、組立品を安全に搬送し、次工程であるオーブン硬化へ移すことができます。
続くオーブン硬化では、未硬化部分を完全に硬化させるとともに、ポリマーの架橋反応を完了させます。
この熱硬化工程によって最終的な接着特性が形成され、製品寿命を通じて安定したカメラ性能を維持するために必要な高い接着強度と信頼性が得られます。
アクティブアライメント用エポキシ接着剤のメリットと課題
現在、市場で使用されているAA用接着剤の大半はエポキシ樹脂をベースとしています。
エポキシ樹脂は、UV硬化と熱硬化の両方に対応しやすく、デュアルキュア工程に適した材料です。
また、多様な硬化剤が利用できるほか、加工性に優れ、樹脂、金属、ガラスなど幅広い材料に高い接着性を示します。
さらに、耐環境性や長期信頼性にも優れています。
しかし、AA用途では一般的な性能だけでは十分ではありません。
OEMメーカーやカメラモジュールメーカーごとに求められる性能が異なるため、用途ごとの最適化が必要になります。
接着剤に求められる課題
カメラモジュールでは、ポリカーボネート(PC)や液晶ポリマー(LCP)などの軽量熱可塑性樹脂が広く使用されています。
これらの材料は軽量で高剛性、低吸湿性、耐薬品性にも優れていますが、メーカーやグレードによって表面状態が異なります。
そのため、接着剤によっては接着強度や耐久性が大きく変化することがあります。
また、樹脂部品は熱の影響を受けやすいため、熱硬化工程では80℃以下に制御されることが一般的です。
これを超える温度では樹脂が変形し、光学性能に悪影響を及ぼす可能性があります。
接着剤収縮の影響
AA工程では、接着剤の体積収縮も重要な管理項目です。
一般的なエポキシ接着剤は3~5%程度収縮します。
収縮量が大きいと、せっかく最適化したレンズ位置が硬化中に変化し、画像品質が低下する可能性があります。
接着剤の収縮量は硬化温度とも関係しています。
高温で硬化するほど収縮が大きくなる傾向があり、低温硬化ではその影響を抑えることができます。
したがって、低温で十分に硬化できる接着剤は、熱に弱い樹脂部品や光学精度が要求される用途において大きなメリットがあります。
吸湿による位置ずれ
接着剤の吸湿性も重要です。
硬化後の接着剤が水分を多く吸収すると膨張が生じ、レンズ位置が変化して画質低下につながる可能性があります。
従来型一液エポキシ接着剤の課題
AA用エポキシ接着剤の多くは、一液型(プレミックス)です。
これらは室温でも反応性が高いため、通常は−40℃程度で冷凍保管する必要があります。
そのため、大型冷凍設備やドライアイス輸送が必要となり、コストや消費エネルギーが増加します。
また、一度解凍すると反応が始まるため、作業可能時間(ワークライフ)が短く、時間の経過とともに塗布性も変化してしまいます。
一般的なAA用接着剤は約80℃で熱硬化するよう設計されていますが、さらに低温で反応性を高めると、ワークライフが極端に短くなるという課題がありました。
KRYLEXのKURA-LOW Technologyは、こうした従来型一液エポキシ接着剤の課題を解決するために開発された独自技術です。
KURA-LOW Technologyを採用したKRYLEXデュアルキュアAA接着剤
KURA-LOW Technologyは、室温では高い保存安定性を維持しながら、60~80℃という比較的低温で高い反応性を発揮できるよう設計されています。
そのため、室温でも数週間という長いワークライフを実現できます。
さらに、ドライアイス輸送や−40℃冷凍保管が不要となるため、輸送コストや保管コストの削減に加え、エネルギー消費の低減による環境負荷軽減にも貢献します。
KRYLEX KD7009
KD7009は、KURA-LOW Technologyを採用したアクティブアライメント用接着剤です。
60℃という低温でも硬化可能でありながら、室温では非常に長いワークライフを実現しています。
保管温度も−5℃の冷蔵、または一般的な−20℃冷凍庫で対応できます。
また、UV硬化速度が速く、深部まで十分に硬化します。
さらに、最適化されたチキソトロピー特性により、自動ディスペンス性に優れる一方で、UV照射前のレンズ位置を安定して保持できます。
金属(SUS、アルミニウム)および樹脂(PC、LCP)に対して優れた接着性を示し、高温高湿環境下でも高い信頼性を維持します。
KD7009の主な特長
- ドライアイス輸送不要
- −40℃での冷凍保管不要
- 室温で長時間のワークライフを実現
- 高速UV硬化
- 60~80℃でオーブン硬化可能
- 低収縮
- 低吸湿
- 硬化時の重量減少が少ない
- 金属および樹脂に対する高い接着性
- 優れた耐衝撃性
- 高温高湿環境(85℃・85%RH、または60℃・90%RH)においても優れた耐久性を発揮